寝ようとする→兄の焼死体がこっちを見ている→起きる

54 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2012/02/20(月) 20:23:10.23 ID:0+F9qqc+0
変なとこ見られちゃったなあ
ひーちゃんはちょっと気まずかった
二人はようやく完成したレポートをメールで送り、
はーちゃんはここにいる理由がなくなった

はーちゃんは立ち上がった
CDをポリーニに換えて戻ってきた

「まだなんかあった?」とひーちゃんが聞くと、

「さっきの話、全部本当だよね?」とはーちゃんは言った

「ゴキブリってのは嘘だ」とひーちゃんは答えた

57 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2012/02/20(月) 20:25:17.44 ID:0+F9qqc+0
「ゴキブリってのは嘘だ。俺、ちょっと頭おかしくてさ。
一人で寝ようとすると、眠りについた瞬間にふっと目が覚めて、
全身焼けただれた兄がこっちを見てるっていう幻覚を見るんだ」

「……はあ?」

「マジだよ、はーちゃん。おかしいよな」

ひーちゃんが笑った
ひーちゃんが笑うタイミングが、
なんとなくはーちゃんには分かった気がした

60 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2012/02/20(月) 20:29:05.48 ID:0+F9qqc+0
はーちゃんはしばらく黙っていた
音楽のおかげで、沈黙は苦痛ではなかった
窓から差し込む西日が部屋を赤く染めた

はーちゃんはひーちゃんを横からどついた
弱っていたひーちゃんはあっさりソファの上に倒れた

「寝なさい」とはーちゃんは言った

ひーちゃんは頷いて眠った

61 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2012/02/20(月) 20:30:39.83 ID:0+F9qqc+0
ひーちゃんはびっくりするほどよく眠った。

62 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2012/02/20(月) 20:34:09.76 ID:0+F9qqc+0
ひーちゃんが目を覚ました
うつらうつらしているはーちゃんが横にいた

「おはよう」とひーちゃんは言った

「ん? ……ああ、おはよう」

時計を見て、ひーちゃんは驚いた
「七時間、ずっとここにいたんだ?」

「ん、まあ。本もあったし」
はーちゃんは慌てて本を掲げてそれを証明した
本が逆さまであることに関して
ひーちゃんは特に何も言わなかった

63 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2012/02/20(月) 20:35:49.35 ID:+NcOOjojO
重松清系の怖さに近いのかな

64 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2012/02/20(月) 20:36:57.71 ID:xzLBUy9f0
こわいおもしろい
こわいおもしろい

65 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2012/02/20(月) 20:37:19.68 ID:0+F9qqc+0
ひーちゃんはお礼を言った
「ありがとう。あと、コーヒーありがとう」

「君、人にちゃんとお礼言えるんだね」
はーちゃんは目を逸らして言った

「言えるよ。君こそ、人に優しくできるんだね」

「別に。あー眠い」

はーちゃんはすぐに眠りだした
ひーちゃんは外に出て、久しぶりに心地よく伸びをした

よく寝たー。

67 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2012/02/20(月) 20:40:29.20 ID:0+F9qqc+0
二時間後、はーちゃんが目を覚ました
ひーちゃんのソファを使っていたことに気づき、
気まずそうな顔で丁寧になおした

「寝ちゃった」とはーちゃんは言った

「おはよう」

「おはよう……帰るね」

「ん、じゃあ」

はーちゃんは目をこすりながら出ていった

ひーちゃんはその光景を一生忘れないと思う
もうすぐ死ぬから当たり前と言えば当たり前か

あんまり死にたくないなあ、とひーちゃんは思った
でもそういうわけにもいかないのだ

69 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2012/02/20(月) 20:43:23.18 ID:rczFjYKG0
わふー

ひーちゃん何で死んでしまうん

70 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2012/02/20(月) 20:43:31.94 ID:0+F9qqc+0
以来、はーちゃんはときどき手伝ってくれるようになった

「ひーちゃん、ひーちゃん」

「んー?」

「最近寝てる?」

「寝てない」

「寝る?」

「寝さして」

二人でいるときは、いつもどっちかが寝てるから
あんまり言葉を交わすこともなかったが、
ひーちゃんもはーちゃんもその時間がとっても好きになった

71 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2012/02/20(月) 20:47:03.20 ID:pElToZtEO
はーちゃんいい子
マジいい子

72 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2012/02/20(月) 20:47:25.39 ID:0+F9qqc+0
ちなみにこれを書き込んでいるテキストファイル名がヒーハーであることは言うまでもない。

73 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2012/02/20(月) 20:48:30.93 ID:2K5NI/Z70
何故今言った

74 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2012/02/20(月) 20:49:21.34 ID:0+F9qqc+0
はーちゃんが好きな煙草はキャスターだった

「部屋ん中で煙草吸わないで」

「いいじゃん、どうせもうすぐいなくなるんでしょ、きみ」

「おいしいか、それ?」

「まさか。おいしいわけないじゃん」

「吸うなよ」

「だって私に煙草が似合うんだもん、しょうがないじゃん」

「似合わないよ。あと、髪染めるのも似合わない」

「似合うし」

「化粧濃い」

「うっせー」

はーちゃんの化粧は徐々に薄くなり始めた

77 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2012/02/20(月) 20:53:09.67 ID:0+F9qqc+0
大学には保育科のためのピアノ練習室があった
講義の合間に、ひーちゃんが眠くなったとき、
はーちゃんはそこにひーちゃんを連れ込んだ

はーちゃんは定番のゴルドベルク変奏曲を弾いて、
ひーちゃんはピアノカバーにくるまって寝た

音楽室は外の音が全く聞こえなかった
はーちゃんはひーちゃんが起きるのを待つ間、
試験範囲をバカにも分かりやすくまとめることにした
自分がそこまでしてあげる理由が分からなかった

80 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2012/02/20(月) 20:56:05.67 ID:0+F9qqc+0
はーちゃんがいても兄が現れるようになったことは言わないでおこう。

82 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2012/02/20(月) 20:57:50.93 ID:rczFjYKG0
マジかよ、ひーちゃん終わりじゃねぇか

84 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2012/02/20(月) 20:59:22.84 ID:0+F9qqc+0
「なんで自殺しようと思ったの?」

その頃にははーちゃんも、ひーちゃんの自殺未遂で
家族が全員死んじゃったってことを知らされていた

「生きてて楽しくなかったんだ。本当に深い理由はない。
当時の俺は知的生命体じゃなかったんだよ」

「それで死ぬなんて、馬鹿じゃないの?」

「そう、馬鹿だったんだ。けっこう生きるの楽しいのにな」

そう言った後で、ひーちゃんはちょっと嫌な気持ちになった
ひとごろしのひーちゃんは三人も殺したのだ
楽しい楽しい人生を三つも焼却してしまった
殺されても文句は……あるよな、それでも

85 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2012/02/20(月) 21:03:22.18 ID:0+F9qqc+0
「罪ってのは永遠に許されないもんだと思う?」

ある日ひーちゃんは唐突にそう言った

「そうだなあ」とはーちゃんは考えた

どうにもうまい慰めの言葉を思いつけなかった
だって、確かにひーちゃんは悪いやつなのだ

今のひーちゃんは絶対に悪さはしない、
いわゆる「更生した」ひーちゃんだけど、
三人殺してしまったことが許されることはない

86 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2012/02/20(月) 21:06:37.40 ID:0+F9qqc+0
困り果てたあげく、はーちゃんは、
「私は君のこと好きだよ」と言った

「はぐらかさないで」とひーちゃんは言った

「そっちこそはぐらかさないで」とはーちゃんも言った

ひーちゃんは眠気で理解力が落ちていて、
はーちゃんが何を言いたいのか分からなかった

87 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2012/02/20(月) 21:11:03.47 ID:0+F9qqc+0
はーちゃんはひーちゃんをソファに押し倒した

「気にすんなよ。寝なさい」

でもひーちゃんは目を開けたままだった

はーちゃんはソファに座り、ひーちゃんの頭を膝に乗せた
ひーちゃんますます眠れなくなった

88 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2012/02/20(月) 21:12:22.16 ID:rczFjYKG0
大学生の癖に可愛いやつらめ

89 : 忍法帖【Lv=40,xxxPT】 【34.6m】 :2012/02/20(月) 21:16:25.34 ID:7WBdX0xN0
そろそろパンツ脱いだ方がいい?

90 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2012/02/20(月) 21:17:26.25 ID:0+F9qqc+0
はーちゃんはちょっと考えた
これ、二人で住んだ方が効率いいよなあ
そうしたらいちいちお互いの家まで来なくて済むし、
家賃も安くなるし、私ひーちゃん好きだし

ようやく寝息を立て始めたひーちゃんの
頭をそっと撫でながら、はーちゃんは決めた
ひーちゃんが起きたら、一緒に暮らそうって言おう

93 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2012/02/20(月) 21:21:36.58 ID:0+F9qqc+0
「おはよう」ひーちゃんが起きた

「おはよう。よく寝れた?」

「正直、緊張してあんまり寝れなかった」

「あはは。だっせー」

「嬉しいけど、こういうのは困る」

「そっか。次もやろうっと」

「暗いから気を付けて帰りなよ」

「うん。じゃあね」

はーちゃんは手を振って家を出た
ひーちゃんはドアが閉まってもしばらく手を振っていた

95 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2012/02/20(月) 21:22:51.10 ID:0+F9qqc+0
はーちゃんが帰ると、ひーちゃんはもう一度眠った。

96 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2012/02/20(月) 21:23:28.26 ID:5pHrw3Ib0
>>95
エッ

94 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2012/02/20(月) 21:22:06.50 ID:xzLBUy9f0
やめたげて…

97 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2012/02/20(月) 21:23:53.24 ID:HS0SfoKc0
バン(∩`・ω・)バン
_/_ミつ/ ̄ ̄ ̄/
\/___/ ̄

98 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2012/02/20(月) 21:24:36.37 ID:0+F9qqc+0
翌日はーちゃんが部屋を訪れると、
ひーちゃんはもういなかった
鍵は開いていたので、はーちゃんは待つことにした

100 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2012/02/20(月) 21:27:55.29 ID:0+F9qqc+0
はーちゃんはちょっと寂しかった
十六時間くらいそこで寝たり起きたりした

裸足のまま外に出てみた
虫の声がひりひりきこえた
夏の匂いは濃すぎるくらいだった

「ねえ、映画観に行こうよ。ひーちゃんは寝ててもいいからさ」

はーちゃんはひとりごとを言った

「殺人犯が酷い目にあうやつ。一緒に見に行こうよ」

ひーちゃんがしかめづらをするのを想像して、はーちゃんは笑った

「あと、ついでにさ……こうやって行き来するもの面倒だし、一緒に住みませんか?」

なんで敬語なんだよ、と言われるのを想像して、はーちゃんは笑った

そんで泣いた

102 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2012/02/20(月) 21:32:14.23 ID:0+F9qqc+0
だからそれ以来、はーちゃんはしおらしくなった
煙草をやめて、髪も黒くして、化粧も薄くなった
ひーちゃんが見ても、私だと気づかないだろうな

ひーちゃんの部屋から持ち帰ったCDをかけて、
はーちゃんは自室で今日もうつらうつらする

膝に乗せたひーちゃんの頭の重みを思い出しながら、
手に触れる硬い髪の感触を思い出しながら。

103 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2012/02/20(月) 21:33:03.06 ID:0+F9qqc+0
以上でひーちゃんとはーちゃんの話、お終い。
最後まで読んでくれた人は暇人。ありがとう暇人。
そして久しぶりの宣伝。
http://fafoo.web.fc2.com/other.htm

108 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2012/02/20(月) 21:35:37.70 ID:lO+xYJ8S0
スレタイからは想像できなかった
切ない乙

110 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2012/02/20(月) 21:37:08.92 ID:pElToZtEO
ひーちゃん何処行ってしもたん…?

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